もし日本語教師がアラビア語を勉強したら

日本語教師とは語学のプロ(のはず)。そんなプロ(の駆け出し)が語学に挑戦したら、どうなる?をテーマに始めたブログも、アラビア語学習編、ヨルダン生活編、日本生活復帰編を経て、大学院編に突入します!

新たな挑戦。知的障がい者施設で日本語レッスン

2013年の10月15日は「イード」というイスラム歴の祝日です。
ラマダンから約90日後のこの祝日は動物犠牲の礼拝をする日です。
神様に何かを屠(ほふ)って、捧げるわけなのですが・・・まあ、それやこれのお話はまた次回。

今回はこのイード休暇中に私が訪れたカラクという町での出来事です。

カラクは以前にもブログに書きましたが、ヨルダン南部の町です。
(詳しくはこちら→ヨルダンの旅 カラク

カラクには国立の障がい者支援施設があり、今回はそこで日本語ミニクラスを開くことになりました!!!

といってもちゃんとしたものではなく、そこで働く友人に「カラクに来るなら軽くなんかやって」というムチャぶりというかキラーパスというかを受けて実施するに至りました。
「軽くなんかやって」と言われた時に、普段からヨルダン人に囲まれてアラビア語を使ってor言葉なんて必要ない系(例えば音楽や歌やダンスなど)をやっている人と違って、日本語ってもう日本語を使うしかないんですよね・・・。
でも友人曰く、
「言語だけでなく『勉強』ということをしたことがない人が多いと思う」
とのこと・・・。

もうどうなることやらわけわかりませんが、とりあえずいつもオリエンテーションで使っている、アラビア語を使って日本語の挨拶表現カービーダンス(笑)をすることにしました。
(なぜカービーダンスかと言えば、今年の誕生日に母が日本からカービーダンス最新版DVDブックを送ってくれて、たまにやっていたから・・・。これを無理矢理「日本文化紹介」と称して実施しようということになった)


そんなこんなで不安しかないまま障がい者施設へレッツゴー。

施設に足を踏み入れ、まずは利用者(障がい者の方でこの施設に住んでいる人のこと)さんの数が多い!
イード中で人数が少ないと聞いていたので、20人前後だと思っていたらなんと30人越え!めっちゃおるやん!!
その30人以上の利用者さんが大きめの部屋に全員集められていて、みんな黙って何もせずただ延々とテレビだけが流れている状況。
く、空気が重い!!
なぜ何もせず、一カ所に集められているのか?
そしてスタッフは相変わらず利用者さんと目も合わさず、携帯をいじったり同僚とおしゃべりをしたりお茶を飲んだり・・・
え?あなた方のお仕事は暇をつぶすことですか?生きてて楽しいですか??
って感じ。
残念ながらこれでいいんだなー、彼らの人生。
彼らについてはいろいろ書きたいこともあるけど、完全に趣旨とずれるので省きます。

さて。
紆余曲折がありましたが、なんとか入所者さん向け日本語ミニクラスを開講。
といっても挨拶表現だけですが。
今回は英語が全く通じないとのことなので、アラビア語で進めることにしました。
ですが、始めてみると・・・アラビア語ですら通じない!!!!

私の自己紹介にも反応がなく、
「サバーフルハイル、ビッルガヤバニーエ『おはよう』」(「サバーフルハイル」は日本語で「おはよう」です)
と言っても、ぽかーん。。。
「おはよう」をリピートさせようと指示だしても、「サバーフ ヌール!」(「おはよう」の意味)と笑顔で返される。
一部理解できた人も、「おあおお」のように母音で発音する程度。それすら難しそう。

そう、、、私の頭は「知的障がい者」に対する配慮がありませんでした・・・
というか全くわかっていなかった。障がい者がどんなものなのか。
私が用意したスライドは、人が挨拶している絵の背景に太陽があり、アラビア語で「サバーフルハイル(おはよう)」とローマ字で「OHAYOO」とひらがなで「おはよう」というモノでしたが、そもそも彼らはアラビア語が読めない。そして絵と意味をつなげられない(人もいるかもしれない)。
そしてそして、何よりも日本語の「音」が全くわからない。
アラビア語の音ですら不明瞭な人もいる・・・。

というナイナイ状態だったので、そうそうに日本語クラスは終了し、カービーダンスへ移行。
やはり体を動かす系はノリがよく、音楽に合わせて運動するのはウケが良さそうでした。
それでもやはりカービーは動きが複雑すぎて難しかったようです。
(約1名、ダウン症の方がノリノリでついてきてくれましたが・・・)

私の初めての知的障がい者の皆さんへの日本語クラスは誰にも何も伝わらず、終了。


友人曰く、この場に集められているのは障がい者レベルが重度の方ばかりなので、より難しかったので仕方がないとのこと。
そこで軽度の方たちを集めてリベンジをすることにしました。


今度は軽度の方たちをある部屋に5、6名だけ集めて実施。
まずは「あ・い・う・え・お」の発音練習から。
1回目の時は、ひらがなは読めないしニーズもないので紹介しませんでしたが、まず正確な日本語の発音がわからないと聞き取りとリピートですらできないということがわかったのでまずは基本のあいうえおから開始してみました。

・・・でもやはりこの時点で難しい。

私の声を聞いただけですぐに言えるわけもなく、口の形を示したり、「あういうえうおう」など繰り返し練習して、「あいうえお」は言えるようになりました。

続いてか行、さ行・・・と練習したかったけど、それは飽きてくるらしくてだんだん元気がなくなっていったので満を持して挨拶表現へ。

さすがに軽度の方なので、先ほど全く伝わらなかったアラビア語での説明も今回は通じてリピートの意図も伝わったようです。
でも、リピートができない・・・T_T

そこで「おはよー」の「よー」の時に左手をすっと伸ばしてみたら、彼らも私と同じように「よー」と良いながら手を動かしました。
次に「おは」の時に手をグーパーして「よー」で手を伸ばしたら、彼らも同じように手を動かすじゃあーりませんか。(しかもちょっと楽しそう)

こ、これは・・・TPR(Total Physical Response Approach/全身反応法)風レッスン!!!
(何度か私がやっている、体を動かしながら学ぶやり方)

その後、口の動きに合わせて手をグーパーしたり腕を伸ばしたり丸くしたりという動作を合わせながらリピート練習をしました。
音声だけよりもよっぽど伝わります。
そして相手も少しは楽しそう。

今回は思いつきでやったので手のひらしか使いませんでしたが、全身で「おはよう」とか「ありがとう」を表現できたら面白かったかもしれません。

彼らは日本語が習いたい訳ではなく、なんとなく学んでいる雰囲気や物珍しさ、刺激がほしかっただけなので、正確に発音できたり覚えられたりということが大事なのではないのだとよくわかりました。

ほどよい刺激。
楽しさ。
学びの雰囲気。

どれも私にとっては初めてのニーズです。
ほんの10分たらずの日本語クラスでしたが、入所者さんたちの気晴らしというか楽しい瞬間になってくれたら嬉しいです。
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Comments

タイムリーな話題

こんにちは。
NTCのぶち姐です。

ほどよい刺激。
楽しさ。
学びの雰囲気。

素晴らし~~い!
これって、教育のなかでは、
日本語教育だけでなく、どの年代でも障がいや健常とか
超えて、大切なんでしょうね。
素敵なヒント、ありがとうございました。

おりしも、昨日、25-3の候補生と一緒に
夕ご飯を食べ、カラク派遣の候補生とカラクの話題に。

帰国してもヨルダンと繋がっているかんじは
なかなか心地よいものです。

2013.10.20(Sun) 12:41       ぶち姐 さん   #fkxczLn.  URL       

Re: タイムリーな話題

ぶちねえ!
いつもコメントありがとうございます。
今回の経験で、いつも当たり前にやっている教え方が実はけっこう難しいことなんだということがわかりました。
なんでも経験ですね。
25-3にはカラク派遣の方がいらっしゃるんですよね。
ヨルダンへのお越しをお待ちしております〜。

2013.10.20(Sun) 14:11       hirokonihongo さん   #-  URL       

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