もし日本語教師がアラビア語を勉強したら

日本語教師とは語学のプロ(のはず)。そんなプロ(の駆け出し)が語学に挑戦したら、どうなる?をテーマに始めたブログも、アラビア語学習編、ヨルダン生活編、日本生活復帰編を経て、大学院編に突入します!

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難民について経験したこと

ヨルダンには10万人以上のシリア難民がいるそうです(UNHCR調べ)。
でも、首都アンマンにいると、なかなか実感ができません。

さて、そんな平和な生活を送っていたある日、電話がかかってきました。
相手はイルビットに住んでいるシリア難民の女の子Sさんでした。
Sさんはシリアで日本語を勉強していた人で、ヨルダンでは他の日本人に紹介されて知り合いました。
彼女は2ヶ月前に赤ちゃんを産んだと聞いていたので、私は「赤ちゃん産まれたんだよね、おめでとう」と言いました。
でも、電話の向こうでは彼女の泣き声。
事情を聞いてみたら、赤ちゃんは原因不明の病気で死ぬかもしれない、とのことでした。
私は初めて経験する衝撃を受けました。
さらに彼女は私に「ごめんなさい」と言いました。
謝罪しながらも、他に頼る人がいない、大きな病院に行かなければならない、難民向けの病院では治療できない、でも自分にはお金がない、、、といったことを、日本語で伝えてきました。

私は彼女が何を言っているのかよくわかりませんでしたが、とにかく赤ちゃんを救わなければならないという思いに駆られました。
このとき、私は彼女に何を言ったか全然覚えていませんが、電話を切ってどうしたらいいのか考えました。
まずはシリア難民関係の仕事をしている人に事情を説明して、どこか助けてくれそうな機関や病院を聞きました。
そして国際NGOならもしかしたら、というアドバイスを受けてUNHCRのHPからNGOの連絡先を探して連絡してみました。
ですが、あいにくイード休暇中ということもあり、誰も出ず、しかたなくメールを送って様子を見ました。
他にも日本のNPOにも連絡してみたりヨルダン国内の病院にも連絡してみました。

このときわかったことなのですが、NGOやNPOというのは活動内容が細分化されているし、横のつながりも統括する人も団体もいないので誰が何をしているのかが全然わかりません。
私は携帯電話とインターネットを持っている人間なので、各NGOに連絡することができましたが、何も持たずに逃げて来た難民が支援にたどり着くのは大変だと実感しました。
情報は力です。

その後、Sさんにも再度詳しく話を聞いてまとめると、つまりはこういうこと。
*赤ちゃんは血液の病気または遺伝子の病気であり、大病院で原因を検査しなければならない。
*その検査はとても高額で難民証明書(保険証の代わりのようなもの)では受けられず、実費を払うしかない。
*そしてそのお金はSさんはもっていない。
(家族も夫も難民なので正規雇用してもらえる場所がない)

ということがわかりました。

ここでやっと私は彼女が私に電話をして、さらには「ごめんなさい」を言った意味がわかりました。

要は私にお金を用意してほしいってことです。
まあ、お金じゃないにしろ、解決策を求めてきたわけです。

お金はいくらかかるか全然わかりませんが、まずはその検査に数万円相当のお金がかかることはわかっていました。
しかし、ヨルダンのお医者さんに聞いたところ、その検査をしても原因がわかるかどうかはわからないし、わかったところでその後の治療は別途お金がかかるとのことでした。

私は彼女にその事実を伝えて、まずは首都アンマンの大きな病院でお医者さんと相談して治療方針や支払い方針を決めた方がいいんじゃないかと伝えました。

でも、彼女はとにかくその検査をしなければならないと思い込んでいるようで、ゆずりません。

私は金策に走らなければならなくなり、自分のお金はもちろんですが募金のイベントを企画したり、彼女が働けそうなツテがあったので彼女に紹介したりしました。


でも、私はこのように自分が動いている中で、ふつふつと疑問に感じていました。
なぜ、私が一生懸命なのだろうか・・・?
もちろん、彼女自身もがんばっているだろうし、家族一丸になって頑張っているのかもしれないが、、、でも、その頑張りが全然見えない
仕事を死ぬ気で探している様子もないし、金策に走っている様子も見えません。

決定的だったのは、募金集めのイベントでの彼女の態度でした。

彼女からシリア難民の生活がどんなに厳しいものかを話してもらって、さらには自分の子供のために募金をお願いしますと彼女の口からお願いするように言ってありました。

でも、彼女はイベント当日にシリアの抱えている問題や日本が戦後、見事復興した話をして、シリアもそのようになりたいという話をしてくれました。
それだけでした。
子供の話もしなければ、募金の呼びかけもしませんでした。
さらには、彼女はその後イベント中も楽しそうに遊んでいました。

・・・難民は常に悲惨でなければいけないとは思いません。
難民とはいえ、同じ人間ですし同じように生活をしています。笑いもすれば遊びもする。
それは当たり前のことです。
でも、自分の子供が窮地に立たされていて、日本人である私に「ごめんなさい」と泣きながら電話することはできて、なぜ募金をお願いしますということができないのでしょうか???
さらにはイベントの最後に募金箱(私が作った)を渡したところ、「恥ずかしいから持ちたくないです」と言って、持ちませんでした。

あ、唖然・・・。


このイベントを通じて集めたお金を彼女に渡すとき、私は「もう私に手伝えるのはここまでです」と伝えました。「何度もこんなイベントはできないし、私もお金がないのであなたに対してできることはこれで最後です」と。
さらに「今後はあなたが責任を持って赤ちゃんを守ってください。あなたがお母さんなんですから」とも言いました。




私は最初、彼女からの電話で「赤ちゃんが死んでしまう」と聞いて、それからパニックになっていました。
私ががんばらなかったら、私がお金を集めなかったら、そのせいで誰かが死んでしまうんだという強迫観念にとらわれていました。
私の悪い癖ですが、人から言われたことをそのまま受け取って自分の責任または仕事だと思い込んでしまいます。
でも、ここで考えなければならないのは、誰が責任者なのか?ということです。
私は赤ちゃんの母親ではありません。
赤ちゃんを守らなければならないのは母親のSさんであり、その夫や家族たちです。
もちろん、難民は大変です。
彼女だってシリアにいたら私には頼るまでもなく解決できたことでしょう。
ある日突然国から逃げることになった困難を私は知りません。

それでも、どんな事情があるにせよ、やはり私が責任を負う必要はないんだと思いました。
むしろ、私が負ってはいけないんだとも思いました。
他人に頼って何とかなると思わせてしまってはいけないんだ、と。
特に彼女のように健康な体と家族で普通の生活をおくれている人は特に。
(と、ヨルダンでシリア難民支援をしている人にも言われました)

私は難民については素人です。
情報を提供したり、機会を提供することはできても、解決策を用意できるような人間じゃないし、責任を負える人間でもないんだな。

と、いうことを学びました。
彼女とその家族の未来が幸多からんことを祈ります。
そして、1日でも早く世界から争いがなくなりますように。
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Comments

こんにちは、またコメントしてしまいます^^;日本語教師に興味が出てきて、というコメントを以前書き込んだくろと申します。お返事までいただいて、ありがとうございました。
私も仕事をしています。子供もいて、自分の時間は朝夕の通勤電車の中だけ、みたいな状態ですが、ひろこさんのブログやポッドキャストを繰り返し見聞きして世界を広げています。

今回の難民のこととか、前回のすごすぎる学生さんのこと、私には巻き込まれることしかできないかも〜~_~;と驚くばかりです。
たしかに、ハンパな気持ちじゃできないし、首を突っ込むべきではないんだなと感じました。

ところで、以前のブログでカケポんのポッドキャストのことを知り、聞いてみました。すっごく楽しかったです。山ごもりのこととか…
ますます日本語教師っておもしろい!と思いつつ、同時に、やっぱり覚悟のいる仕事だとも感じています。

2014.08.24(Sun) 03:17       くろ さん   #-  URL       

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。
半端な気持ちでとりくんではいけない、というのは難民の近くにいて支援する際のことなので、日本語教師をしたり難民支援(募金とか)をするのは全然問題ないと思います。むしろそういう人がいてほしいと強く思いました。
難民というすごく大きな、それこそ個人では解決できない問題を抱えている人と接するとき、自分の責任を線引きする覚悟が必要だと思いました。
それこそ、誰かが死ぬことになったとしてもできないことはあるという覚悟が必要かな、と。
まあ、私の考え過ぎかもしれませんが。
またお時間あったらブログやPodcastをお読み&お聞きください。ありがとうございます。

2014.08.24(Sun) 11:53       hirokonihongo さん   #-  URL       

同感

お久しぶりです。ぶち姐です。
うんうん、同感。
情や優しさだけでは、本当のサポートをすることができない・・・
現状がいくら厳しくてもね。

ところで、MM調整員と連絡を取りました。
もうすぐ日本。東京でも会えそう!


2014.08.31(Sun) 19:08       ぶち姐 さん   #fkxczLn.  URL       

Re: 同感

MM調整員によろしくお伝えください!!!

2014.09.04(Thu) 13:40       hiroko さん   #-  URL       

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